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トランプとクリントン - 大統領選から学ぶ4つのマーケティング・レッスン

- 2人の大統領候補の全く異なるメッセージ戦略 -


米国の有識者は誰もが、トランプ氏がここまで大統領選を勝ち進んでくるとは考えていませんでした。多くの世論もまた、トランプはいつか地滑りを起こし、自ら崩壊すると見ていました。しかし、今アメリカでは、これまでの大統領選挙の常識では考えられないことが起きています。一体トランプ陣営の躍進にはどんな秘密が隠されているのでしょうか?

それは、トランプ氏が優れたマーケティングの戦略家であるということです。


この記事を読み進める前に、一旦この大統領選を政治や政策、人口統計的条件、プラットフォーム、本人の性格、政治家や大統領しての資質などを一切、切り離し、それぞれの陣営のメッセージ戦略に焦点を当てて考えてみる必要があります。つまり、これは選挙ではなくマーケティングとして考えてみるのです。そこには両氏のマーケティング戦略に明確な違いがあることがわかります。

ところで、皆さんも強力なビジネスライティングやマーケティングメッセージを書きたいと思いますよね?では、今回の大統領選を強力なビジネスライティングやマーケッティングメッセージを書くことと重ねて考えてみましょう。そこから学べる4つの重要なレッスンがあります。

1. 概念を語るのではなく具体的であれ

クリントン氏が掲げるタグライン(スローガン)は覚えていますか?「Stronger Together(一緒の方が強い)」です。それに対してトランプ氏のタグラインは「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国にしよう)」です。どちらにより強力なメッセージを感じますか?あなたがマーケティングメッセージを書いているとしたらどちらを採用するでしょう。明らかにトランプ氏のメッセージがより具体的でインパクトがあります。

トランプ氏の短いタグラインの中には壮大なストーリーがあります。「Make」(やろう)という行動を促す動詞で始まり、誰がどんなベネフィット(利益)を得るのかも明確です。つまりそれは、私たち「America」が「Great」(偉大)になることだと訴えています。最も強烈なインパクトは「Again」(再び)というキーワードに詰まっています。そこにはアメリカの歴史を背景とするアメリカン魂と、過去から未来に向けて、強いアメリカを取り戻すストーリーをイメージさせます。

「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大な国にしよう)・・・どうですが?アメリカ大陸開拓の精神、植民地からの独立、世界の強いアメリカを演じてきた大国、そして誰もがアメリカの強さを疑い始めている昨今・・・アメリカ人のDNAを思い出させ、自尊心を掻き立てる強烈なフレーズです。

一方、クリントン氏のタグラインはどうでしょうか?

抽象的ですね。「Stronger」、「Together」の2文字はどことなく曖昧な形容詞です。なんとなく霊的なメッセージすら感じさせます。おそらくそこには「We are」(私たちは)というメッセージもあるのでしょうが、そこを汲み取ったとしても、それ以上にたくさんの質問を投げかけたくなります。「強くなるって何?」、「何が強くなるの?」、「なぜ、より強くあることがそんなに重要なの?」、「一緒にって一体何なの?」、「どんな意味があるの?」、「一緒もいいけど、今の私の問題はどうなるの?」・・・。次々と質問が沸き上がります。

繰り返しますが、これは商品(大統領候補者)の特徴や性能、長所などを議論しているのではありません。あくまでもマーケティングの議論です。つまり、これらの商品がどのように販売され、どんなメッセージが送られているのか、その違いとそれぞれのメリットやデメリットについて考えることが目的です。

では、トランプ氏とクリントン氏のマーケティング戦略がそのままそっくり入れ替わったらどうなるでしょうか?おそらくトランプのタグラインは「明日をもっと偉大に」のような抽象的なものになり、クリントンは「格差をなくして平等な社会を実現しよう」などという目的を伴うより具体的な感じになるでしょう。

さて、今度はどちらにより強力なメッセージを感じますか?

つまり、顧客心理を巧みに利用し購買に結び付けたいのであれば、抽象的なメッセージではなく、より具体的なメッセージにして、相手にストーリーをイメージさせるものでなければなりません。ストーリーとは、これをやれば私にはこんなベネフィットがあるんだ、という具体的なイメージです。「私たちは最高の価値をご提供します」と言われるより、「当社からお買い求めいただければ、必ず他社より10%引きにします」と言われた方が、より具体的で伝わりやすいですよね。

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2. 理論で説明するのではなく感情に訴える

トランプ氏とクリントン氏のスピーチにも大きな違いがあります。トランプ氏の演説は

(その内容の評価は別として)どこでもエモーショナル(感情に訴えるもの)です。一方、クリントン氏の演説は、巧みに理論武装されています。全てにそれなりの理由があります。それ自体が悪いのではありません。これで大衆が動くかどうかです。

さらにトランプの表現はとてもシンプルで単純なアイデアばかりです。しかし聞いている人の感情に訴えるものがあります。例えば、「Build the Wall!!」と言えば、聴衆はそうだそうだと沸き立ちます。そして、このフレーズを繰り返し、繰り返し、発信し続けることで、沸き上がった感情を聴衆の中に定着させることができたのです。結果的に多くの新たな支持者も獲得することができました。

対照的にヒラリー・クリントンは自他共に認める政策オタクです。自分が知っていること、やりたいこと、できることを理論づけて話したい、そんな意欲が伝わりませんか?しかし、その思いとは裏腹に新たな支持層の獲得には苦戦しています。

ちょっと飛躍した見方かも知れませんが、トランプはどんどん新規顧客を獲得する敏腕セールスマンで、クリントンは、知識は豊富で頭もよさそうなのですが、自分の知っていることは全て伝えたい、自分を披露したい、そんなことを思っていいる新米営業マンのようです。聞く者にはつまらない商品の説明でも、専門用語やちょっとしゃれた言い回しを混ぜながら、構わずしゃべり続けている、そんなイメージです。

もし、トランプが「私はメキシコとの国境に壁を作りますが、その壁のサイズは・・・、その材質は・・・、その壁の建設に労働力を確保し・・・、雇用を創出し・・・、いくらの賃金を払い・・・、メキシコ政府とは・・・」などと言っていたら、彼はこれだけの大衆の支持を得ることができたでしょうか?彼が言っているのは「Build the wall!!」・・・それだけです。

マーケティングでは人の感情を無視することはできません。人はどんなにもっともな理論よりも感情で動きます。マーケティングとは「エモーショナル」そのものです。感情に訴え、感情を掻き立てることです。感情が動かなければ人は動きません。感情が動けば、それが欲求へと駆り立てられます。誰かのマインドを掴みたいのなら、まずはその人のハートを掴む・・・。トランプとクリントンの大統領選からもそんな重要なポイントが見えてきます。

3.複雑な言葉は使わず簡単に

あなたがトランプの発言をどう思うかとは関係なく、彼の発言は多くの人の感情に訴えかけ、記憶に残っています。彼の発言は、どれも短い単語を詰め込んだ短い文章やフレーズになっています。まるでTwitterのツイートのようです。彼が意識して戦略的に行っているかどうか定かではありませんが、その発言のフレーズはTwitterでツイートされ、Facebookのニュースフィードに飛び交うことも多く、ますます拡散していきます。

一方、クリトン氏は高貴に着飾った言葉や難しい言葉を好む傾向にあります。そんな彼女の言葉は、時には難しくてわかりづらく、あまり馴染みがないフレーズも多々あり、彼女との距離を感じてしまう人も多いようです。知識層にはいいのかもしれませんが、特に低教育層や低所得者層などにはお高く留まった嫌味すら感じさせてしまい、馬鹿にされているという印象すら持つ人も多くいるようです。

マーケティングのメッセージで大切なのはわかりやすさです。難しい専門用語や表現はすべて排除し、どんな相手にも瞬時に伝わり理解できるわかりやすい言葉で伝えることです。知っている知識をフル稼働させて得意気に伝えたいところですが、そこはあえてその衝動を抑え、普通の言葉でわかりやすく伝える・・・、さらに言えば中学生でも理解できる言葉にして伝えることがマーケティングの鉄則です。

4.伝えたい相手だけに着実に伝える・・・

最後にどうしても伝えたい重要なレッスンがあります。それは、誰に向けて送るメッセージなのか、なぜその相手なのか、どういうメッセージにして送ればよりその相手に伝わるだろうか、それをしっかりと理解した上でメッセージ戦略を組み立てるということです。4つ目のレッスンは「誰」がキーポイントです。

できればこれはトランプ氏本人にも聞いて確認してみたいところですが、トランプは敵陣営の支持が確実と思われる層はあえてターゲットから外し、狙ったターゲット層だけに向けてメッセージを送り続けているように思えます。しかもその層は、マーケティングでいうなら、ニーズもウォンツも低い層であり、あえてそんな層を選んだのではないかと思えてしまいます。ただ、それらの層は競合会社がターゲットとはしない、競争の少ないマーケットでもあります。つまり、大統領選ではあまり選挙に行かない政治に関心が低い、誰もメインターゲットにはしない層と言えるかもしれません。これらの層にあえて焦点をあて、ターゲットにして、そこに新たなニーズを創出することにより、その周辺にいる浮動票層をも巻き込んでいったのではないでしょうか。

マーケティングにはペルソナという戦術がありますが、ターゲットを明確にイメージすることは何よりも大切な作業です。そして、その相手に向けて有効で適切なメッセージを発進し続けます。まさにトランプの戦略では、このペルソナを戦術とし、徹底的なメッセージ戦略が実行されました。その戦略が今日のアメリカの情勢とも相まって、誰もが想定しなかった躍進にも繋がったのではないでしょうか。

ターゲットは絞り込めば絞り込むほど、発信するメッセージも必然と具体的になり明確になります。そして、メッセージが明確になればなるほど、それに共感するものも増えてきます。もちろん反発する人も増えますが、それでも狙った層からの支持を着実に増やすことができ、そして、さらにはその周辺の層にまで支持を増やすことができます。

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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

さて、ここまでドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏の大統領選の戦いを、マーケティングの視点から見てきました。今月には大統領選の勝敗の行方を大きく左右するテレビ討論会が行われる予定です。おそらくクリントン側は入念な準備で挑み、得意な理論武装で劣勢となりつつ状況を打破しようとするでしょう。そこにはマーケティングの理論だけでは語れない大統領選ならではの戦い方があります。

何度も繰り返しになりますが、この記事は、どちらが大統領にふさわしいかを議論するものでも、大統領選の行方を予想するものではありません。これまでのトランプ氏の躍進から見えてくる、メッセージ戦略という大切なマーケティングのレッスンを考えることが目的です。

メッセージ戦略とは商品の良し悪しを議論するためにあるのではありません。商品はビジネスの成否を分ける重要な鍵であることには変わりありません。ただし、商品が何であれ、それらをどう伝えられるかはメッセージの力です。商品が弱くても、強いメッセージは強いメッセージとして伝わります。逆に商品が強くても、弱いメッセージは弱いメッセージとして伝わってしまいます。

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